望まぬ退院を余儀なくされる末期癌患者に適した「ホスピス」という選択肢について
2025.02.01 2025.02.03
末期癌(がん末期)と診断され、早期の退院を余儀なくされた患者や家族は、今後の生活や治療環境に大きな不安を感じることでしょう。退院を余儀なくされた場合の選択肢として挙げられるのが「ホスピス」です。
本記事では、ホスピスが選ばれる理由や対象者、緩和ケアとの違い、費用について詳しく解説します。また、介護医療院・緩和ケア病棟・介護付有料老人ホームといった、ホスピス以外の選択肢についても比較しているのでぜひ参考にしてください。
【この記事のポイント】
- ホスピスは末期癌患者が安心して最期を迎えるための重要な選択肢
- 患者の状態に応じて他の施設も視野に入れるべき
- 施設選びは費用やサービス内容を比較して慎重に行うことが重要
末期癌(がん末期)になると退院を勧められる理由
末期癌の患者が退院を促される背景には、病院の役割や医療資源の効率的な運用という理由があります。特に急性期病院においては、緊急性の高い症状に素早く対応し、治療を施すことが退院を勧める主な目的です。
末期癌の段階では、積極的な治療から痛みの緩和や生活の質を維持するケアへとシフトすることが少なくありません。その際、急性期病院よりも在宅医療やホスピスなど、長期的で手厚いケアを提供する施設が適していることがあります。
さらに、医療費の増加を抑えつつ、より多くの患者が治療を受けられるよう、国も長期入院を避け、早期退院を推奨する体制を取っているのです。
末期癌(がん末期)で退院した後の入居先である「ホスピス」
末期癌で退院を余儀なくされた場合の入居先として「ホスピス」が挙げられます。ここではホスピスについて、以下の視点から解説します。
- ホスピスの対象者
- 緩和ケアとの違い
- ホスピスで受けられるケアの内容
- ホスピスの入居にかかる費用
- ホスピスに入院・入居が可能な余命
ホスピスの対象者
ホスピスは、痛みや苦しみを軽減し、穏やかに最期の時間を過ごしたいと望む人を支える施設です。基本的に、年齢や病気の種類、必要な医療行為によって入居を拒否されることはありません。末期癌患者も対象となりますが、施設の種類やスタッフの状況によって、受け入れが難しいケースもあります。
たとえば、緩和ケア病棟では、末期癌やエイズといった病気で治療が困難な状態の患者や、手術や抗がん剤治療を希望しない方が対象になることが一般的です。
また、認知症が進行し、安全上の理由で身体拘束が必要になる場合は、事前に個別相談が必要です。
緩和ケアとの違い
緩和ケアは、生命に関わる病を抱えた患者や家族に対し、身体的・精神的サポートを行うケアです。日本では、主に癌患者が対象とされることが多く、病気の進行度に関係なく、不安や悩みを抱える人に勧められます。
一方ホスピスケアは、末期癌患者を中心に、苦痛を和らげるための全人的ケアを行うのが特徴です。
ホスピスケアでは、患者や家族を中心に、医師や看護師、専門職、ボランティアがチームを組み、協力してサポートします。
当初は末期癌やエイズ患者向けのケアでしたが、最近では訪問看護や訪問介護にも導入され、対象となる病気の範囲も広がっています。
ホスピスで受けられるケアの内容
ホスピスでは、病気そのものを治療するのではなく、病気に伴う苦痛や不安を和らげるためのケアが行われます。提供されるケアは、身体的なサポートに加え、精神的・社会的な支援にも及びます。
身体的ケア
癌患者が感じる痛みに対しては、鎮痛剤や医療用麻薬を用いて痛みを緩和します。呼吸が苦しい場合には酸素吸入が行われ、日常生活では食事や入浴、排泄の介助も実施されます。
精神的ケア
死を目前にして心が揺れている患者には、心理士や牧師などが寄り添い、心のサポートを行います。看護師や介護職との会話、家族や友人との面会、レクリエーション活動などを通じて不安や緊張を和らげ、心の安定を図ります。
社会的ケア
経済的な悩みがある場合は、ソーシャルワーカーが公的支援を受けられるよう手続きや制度の案内を行います。医療費や入院費の負担軽減、相続や遺言に関するサポート、社会生活に必要な手続きまで幅広く支援してくれるでしょう。
ホスピスの入居にかかる費用
ホスピスへの入居費用は、選ぶ施設の種類によって大きく異なります。
緩和ケア病棟では入院料に加え、食事代や差額ベッド代が必要です。入院料は施設や入院期間によって変わりますが、健康保険の適用や高額療養費制度により、自己負担額を抑えられます。
一方で、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のホスピスプランでは、以下の費用が別途かかる場合が多いでしょう。
- 居住費
- 管理費
- 食費
- 日常生活費
- 医療・介護サービス費
居住費や管理費は部屋の種類や立地によって異なり、月額15万~30万円ほどが一般的です。医療・介護費用は、およそ5万~25万円が目安です。また、ホスピスの入居期間は比較的短いため、入居一時金を不要としている施設が多い傾向にあります
なお、高額療養費制度を利用することで、1ヶ月の医療費の自己負担を軽減することが可能です。
参考:ReHOPE「ホスピスとは。病院とホスピス型住宅の違い、ケア内容、費用を徹底解説」
ホスピスに入院・入居が可能な余命
ホスピスへの入院・入居に必要な余命の条件は施設ごとに異なりますが、一般的には「余命6ヶ月以内」の患者が対象です。
ただし、施設によっては「余命3ヶ月以内」や、余命に関する明確な規定が設けられていない場合もあります。状況に応じて、施設ごとの受け入れ条件を確認することが重要です。
末期癌でホスピスに入院できない場合
ここでは、末期癌でもホスピスに入院できない以下のパターンについて解説します。
- 末期癌以外の治療が優先される
- 他の患者に迷惑をかける懸念がある
末期癌以外の治療が優先される
末期癌であっても、他の病気の治療が必要な場合、ホスピスへの入院が認められない可能性があります。例えば末期癌の患者が心臓病や肺炎などの合併症を抱えている場合、これらの病気の治療が優先されがちです。
ホスピスは、癌による痛みや苦痛を軽減することに特化した施設であり、他の疾患の治療には対応できないケースが多いのです。
他の患者に迷惑をかける懸念がある
認知症や精神疾患を併発している末期癌患者の場合、他の患者への影響を考慮し、ホスピスへの入院が難しくなることがあります。
ホスピスでは患者同士が交流し、穏やかな時間を共有することを大切にしています。そのため、他の患者に迷惑をかける可能性があると判断された場合、入院を断られることがあるのです。
ホスピスだけではない?末期癌患者の退院後の選択肢
末期癌患者が退院を余儀なくされたあとの選択肢は、ホスピスだけではありません。ここでは、ホスピス以外の選択肢である以下について解説します。
- 介護医療院
- 緩和ケア病棟
- 介護付有料老人ホーム
介護医療院
介護医療院は、医療と介護の両方が必要な高齢者向けの施設です。長期療養に対応した医療サービスに加え、日常生活の支援や介護サービスを提供しています。医療依存度が高い方にとって、安心して長期間過ごせる入居先の候補となるでしょう。
緩和ケア病棟
緩和ケア病棟は、治療が難しい病気の患者に対し、痛みや苦しみを和らげることを目的とした病棟です。主に、癌患者やエイズ患者が対象となります。緩和ケアは、入院・通院・在宅と、状況に応じてさまざまな形で受けることが可能です。
介護付有料老人ホーム
介護付有料老人ホームは、24時間365日スタッフが常駐し、安心して生活できる環境を提供する施設です。中には医療依存度の高い方を受け入れるために「ホスピスルーム」を備えている施設もあります。
【ホスピス別】特徴・費用・サービス内容を比較
実際に入居するホスピスを決めるうえで、施設ごとの比較は重要です。ここでは、以下の施設における特徴・費用・サービス内容を紹介します。
- 医心館
- ファミリー・ホスピス
- スーパー・コート
- フレアス
- ReHOPE
医心館
特徴 |
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費用 |
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サービス内容 |
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医心館は、医療依存度が高い人が安心して療養できる環境を提供する施設です。
病院と同等の看護体制が整っていますが、医師が常駐しているわけではありません。代わりに、地域の医療機関と連携し、必要な訪問診療を受けられる仕組みを採用しています。
医心館公式サイトはこちら
ファミリー・ホスピス
特徴 |
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費用 |
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サービス内容 |
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ファミリー・ホスピスは、医療的ケアを必要とする癌患者や難病患者が、最期まで自分らしく過ごせる環境を提供する施設です。
住み慣れた地域での療養を大切にし、シェアハウス形式を採用しながらも、プライバシーに配慮した個室が完備されています。自宅のような居心地の良さと、病院レベルの医療サポートが調和している点が大きな特徴です。
ファミリー・ホスピス公式サイトはこちら
スーパー・コート
特徴 | 大阪・兵庫・京都・奈良で56施設を展開する有料老人ホーム
パーキンソン病専門住宅、難病に24時間看護対応するナーシングホーム、上質な暮らしを叶えるプレミアム施設など、多様なニーズに対応 |
費用 | 施設やプランによって異なる
初期費用として前払金が必要な場合がある 月額費用には家賃・管理費・食費などが含まれる その他、介護保険や医療保険の自己負担分、生活費などがかかる |
サービス内容 | 24時間365日の介護・看護体制
リハビリテーション 認知症ケア 医療連携 食事提供 入浴介助 レクリエーション |
スーパー・コートは、関西エリアを中心に有料老人ホームを運営する企業です。さまざまな種類の施設を展開し、入居者一人ひとりの状態や希望に合わせたサービスを提供しています。
「安全・清潔・イキイキした生活」を理念とし、高齢者の身体機能の維持や向上を目的としたリハビリ・トレーニングを実施しています。また、ホテル事業で培ったホスピタリティ精神を活かし、きめ細やかなサービスを提供している点も魅力です。
スーパー・コート公式サイトはこちら
フレアス
特徴 | 住宅型有料老人ホームまたはサービス付き高齢者住宅に訪問看護事業所・訪問介護事業所を併設した医療対応型療養施設
看護師・介護士が24時間365日体制で、安心・安全なケアを提供 20床から28床の小規模体制で、きめ細やかなケアと鍼灸マッサージによる緩和治療を提供 |
費用 | 賃料・管理費
食費 その他実費(おむつ代・洗濯代・リネン寝具代など) 介護保険・医療保険適用時は、別途自己負担が発生 |
サービス内容 | 24時間365日の看護・介護体制
訪問診療 訪問看護 訪問介護 鍼灸マッサージ 疼痛コントロール 経管栄養 褥瘡ケア ストーマケア 気管切開ケア 人工呼吸器管理 看取りケア |
フレアスは、医療依存度の高い方が安心して過ごせるよう、地域に根ざした医療と介護を一体化させた医療対応型の療養施設です。小規模ならではの柔軟さを活かし、入居者一人ひとりのニーズに合わせたオーダーメイドのケアを提供しています。
特筆すべき点は、マッサージ業の強みを活かした鍼灸マッサージを導入していることです。専門の鍼灸師が機能訓練や身体状況に合わせた施術を行い、痛みや不調を和らげると同時に、入居者の生活の質(QOL)向上をサポートしています。
フレアス公式サイトはこちら
ReHOPE
特徴 |
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費用 |
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サービス内容 |
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ReHOPEは、末期癌や神経難病などの医療依存度が高い人が、住み慣れた地域で最期まで自分らしい生活を送るためのホスピス型住宅です。看護師と介護士が24時間365日常駐し、手厚いケアを提供しています。
全室が個室のためプライバシーがしっかり守られ、まるで自宅にいるかのような安心感を得られるのが特徴です。
ReHOPE公式サイトはこちら
まとめ
本記事では、ホスピスの対象者や費用、緩和ケアとの違いや他の施設との比較について解説しました。
末期癌患者は、病院の都合で予期せぬ退院を促されることも少なくありません。ホスピスは、安心して終末期を迎えるための有力な選択肢となります。
本記事を参考に、末期癌に苦しむ状況から抜け出すための最適な選択肢を見つけてください。
FAQ
末期癌患者が退院を勧められる理由は?
末期癌患者が退院を勧められるのは、病院の役割と、限られた医療資源を効率的に活用する必要性が理由です。
詳しくは記事内「末期癌(がん末期)になると退院を勧められる理由」をご覧ください。
望まぬ退院をした末期癌患者にとっての選択肢とは?
退院を余儀なくされた末期癌患者の選択肢には、ホスピスが挙げられます。
詳しくは記事内「末期癌(がん末期)で退院した後の入居先である「ホスピス」」をご覧ください。
ホスピス以外の選択肢には何がある?
ホスピス以外の選択肢として挙げられるのは、以下の施設です。
- 介護医療院
- 緩和ケア病棟
- 介護付有料老人ホーム
詳しくは記事内「ホスピスだけではない?末期癌患者の退院後の選択肢」をご覧ください。