ホスピスの基礎知識

施設で受けられる「終末医療」とは?概要やメリット・デメリット、主な施設について

2025.01.25 2025.01.27

医学的に回復の見込みがないとされた家族に対し、最後まで自分らしくいて欲しいと考えるのは当然のことかもしれません。延命治療ではなく、あくまで残された時間に目を向けてくれる終末医療(ターミナルケア)を受けるのがおすすめです。

今回は終末医療について、概要やケアが行われる場所について解説します。また、終末医療を受けられる施設に関する情報を、メリット・デメリットとあわせて紹介します。

終末医療(ターミナルケア)とは

終末医療とは、医師が回復の見込みがないと判断した患者に対して提供される医療およびケアのことです。治療の延命を目指すのではなく、残された時間をいかに充実して過ごすかを重視しています。

終末医療では、身体的な苦痛の軽減だけにとどまらず、精神的・社会的・スピリチュアルな面での支援にも重点が置かれるのも特徴です。近年では、病気の診断を受けた段階から緩和ケアを開始するケースが増えていることから、需要が高まっていると考えられるでしょう。

ここからは、終末医療に関する以下のトピックを取り上げ、わかりやすく解説していきます。

  • そもそも「終末期」とは
  • 終末医療の内容
  • 終末医療が行われる場所

【参考記事】

そもそも「終末期」とは

「終末期」とは、医学的に回復が見込めないと判断された状態を指します。ただし、医師の判断だけではなく、患者本人(意識がない場合を除く)や家族、看護師など、関係者全員が納得のうえで終末期とされるのが特徴です。

終末期は、一般的に余命が数週間から半年程度と予測される期間を指しますが、長さは病気や症状によって異なります。癌や難病のように進行が緩やかな場合、死の可能性が数年前から見込まれることもあります。しかし、具体的な終末期の判断は、容体が急激に悪化した際に行われるのが一般的です。

大切なのは期間の長短ではなく、回復の見込みがなく、死に向けた準備が求められる状態である点です。
出典:公益社団法人全日本病院協会|終末期医療に関するガイドライン~よりよい終末期を迎えるために~

終末医療の内容

終末医療には、以下3つのケアがあります。

ケアの種類 目的 主な内容
身体的ケア 痛みや不快感の緩和、日常生活の介助
  • 投薬
  • 食事
  • 入浴
  • 排泄介助
  • 経管栄養
  • 胃ろう
  • 中心静脈栄養
  • 床ずれ防止
  • 清拭
精神的ケア 精神的な苦痛の緩和、心穏やかに過ごすための支援
  • 家族や友人との面会
  • 趣味の時間
  • リラックスできる環境作り
社会的ケア 経済的負担の軽減や生活上の問題解決の支援
  • 医療費軽減
  • 支援制度の情報提供
  • 遺産相続・遺品整理のサポート
  • 家族への相談支援

身体的ケアは、終末期における痛みや不快感を和らげることを目的としたサポートです。一般的な介助として、食事・入浴・排泄の支援が含まれます。もしも口からの摂取が難しくなった場合、経管栄養や胃ろう、中心静脈栄養などの方法で栄養を補います。また、床ずれ防止や身体の清潔を保つために、清拭や体位変換も欠かせません。

精神的ケアは、終末期を迎えた患者が抱える不安や恐怖、家族への思いから生じる精神的な苦しみを軽減するための支援を指します。孤独感を和らげるため、家族や友人との面会を促したり、趣味を楽しむ時間の提供が具体例です。患者が最後まで落ち着いて過ごせるよう、ベッド周りの環境を整えることも、精神的ケアの一環として行われます。

最後に挙げられる社会的ケアは、終末期の医療が引き起こす経済的負担の軽減を目的とする支援です。医療ソーシャルワーカーが医療費助成や支援制度の案内を担当し、経済面での負担を軽減します。また、遺産相続や遺品整理に関するサポート、家族の精神的ストレスを緩和するための相談も、社会的ケアに含まれる場合もあるでしょう。

終末医療が行われる場所

終末医療が行われる主な場所は、以下3つです。

場所 メリット デメリット
在宅
  • 慣れ親しんだ環境である
  • 家族と過ごせる
  • 費用が安い
  • 家族の負担が大きい
  • 医療対応に不安が残る
介護施設
  • プロのケアを受けられる
  • 家族の負担が軽減する
  • 孤独感の軽減につながる
  • 費用が高い
医療施設
  • 迅速な医療対応を受けられる
  • 費用が高い
  • 家族と過ごす時間が限られる

在宅での終末医療は、なじみ深い環境で家族と共に過ごしながら最期を迎えられる点が魅力です。医療施設と比べて費用を抑えられるメリットもありますが、食事・入浴・排泄などのケアを家族が担うため、身体的・精神的な負担を抱える可能性があります。そのため、ケアマネージャーや訪問介護といった外部サポートを適宜活用することも大切です。

介護施設での終末医療では、有料老人ホームや特別養護老人ホームなど、介護の専門家から手厚いケアを受けながら最期の時間を過ごせます。家族の介護負担が軽減されるため、入居者と過ごす時間に集中しやすくなります。また、他の入居者との交流によって孤独感が和らぐ効果も期待できるでしょう。しかし、入居費が発生するため、在宅介護よりも経済的に負担がかかってしまいます。

医療施設での終末医療のメリットは、医師や看護師が常駐しているため、体調が急変した際にも迅速に対応できる点です。一方で、入院費や治療費がかさむため、経済的な負担が重くなる傾向にあります。また、面会時間に制限があることから、家族と過ごせる時間が限られるのもデメリットです。安心できる医療環境である一方で、費用と家族との時間のバランスを見極めることが重要になるでしょう。

施設で終末医療を受けるメリット・デメリット

終末医療をどこで受けるか話し合うことは、非常に重要です。自宅で最期を迎えたいと願う人もいる一方で、医療体制の整備や介護の負担を考え、施設でのケアを選ぶ人も少なくありません。ここでは、施設で終末医療を受ける場合のメリットとデメリットについて説明します。

メリット

終末医療を施設で受けるメリットは、大きく分けて以下の3つです。

24時間体制のケア体制

施設には、医師・看護師・介護士などの専門家が常駐しています。そのため、容体が急変した際にも即座に対応が可能で、安心して過ごせるのがメリットです。充実したケア体制は、施設利用の大きな魅力といえるでしょう。

家族の負担軽減

在宅での終末医療では、家族が介護や医療処置のサポートを行わなければならず、精神的・身体的に負担を感じる場合があります。一方、施設であればプロのスタッフが全面的にケアを担当するため、家族は入居者との時間をより有意義に過ごしやすくなり、心の負担も軽くなります。

孤独感の軽減

施設では他の入居者との交流機会があり、スタッフも日中常に見守ってくれるため、入居者が孤立感を抱くことが少なくなります。また、レクリエーションやイベントが企画されており、入居者が新たな楽しみや生きがいを見出しやすくなるでしょう。

デメリット

終末医療を施設で受ける場合は、いくつかのデメリットがあることも覚えておきましょう。

費用の負担

施設の利用には、入居費や食費、医療費がかかります。特に個室の利用や頻繁な医療処置が必要な場合、費用の負担が大きくなりがちです。経済的な準備が求められるため、計画的な資金管理が不可欠です。

面会時間の制限

施設によっては、面会時間があらかじめ定められていることがあり、家族が自由に訪問できない場合があります。そのため、入居者と過ごす時間が限られてしまい、家族との交流が制約される懸念も考えられます。

環境の変化

住み慣れた自宅から離れ、まったく異なる環境へ移ることで、入居者がストレスを感じる場合もあります。また、施設の雰囲気やスタッフとの相性が入居者に合わない場合、なじめずに不安を抱えることも想定されるでしょう。

【施設別】終末医療の特徴

ここでは、以下の施設で行われている終末医療について解説します。

  • ReHOPE
  • 医心館
  • ファミリー・ホスピス
  • フレアス

ReHOPE

ReHOPEは、がん末期や神経難病といった高度な医療ケアを必要とする人を対象にしたホスピス型住宅です。看護師と介護士による24時間365日の手厚いサポートを提供し、病院の安全性と自宅のような自由な暮らしを両立することを目指しています。

ReHOPEでは、すべての入居者に緩和ケアを実施しており、特に終末期を迎えた方にはターミナルケアが提供されます。身体面では、痛みなどの身体的苦痛を和らげるための対応や栄養管理に重点を置き、精神面では、不安や恐怖に寄り添うケアを大切にしているのが特徴です。

社会的支援として、医療ソーシャルワーカーが経済面に関する相談に応じ、必要なサポートを行います。

また、ReHOPEの大きな特徴として挙げられるのが、緩和ケア認定看護師が在籍している施設があることです。専門性の高い体制により、入居者一人ひとりのニーズに合わせた質の高いケアが可能です。

家族や本人の希望をしっかりと受け止め、身体的・精神的な負担を軽減しながら、その人らしい生活を最後まで支援します。

参考記事:ホスピス型住宅のReHOPE|ターミナルケア(終末期医療)とは?人生の最期を穏やかに過ごすためのケア

医心館

医心館は、医療ケアを必要とする方々が安心して生活を続けられるよう、24時間体制で看護と介護を提供する施設です。病院と自宅の中間的な役割を担い、病院の安心感と自宅の自由な環境の両立を目指しています。

医心館では、緩和ケアに重きを置いた終末期医療を実施し、患者の身体的・精神的な苦痛を和らげながら生活の質(QOL)の向上を目指しています。具体的なケア内容として挙げられるのは、医師の指示による薬物療法や心の負担を軽減するためのタッチング・声かけ、体位の調整による呼吸サポート、さらにはマッサージやリラクゼーションなどです。

さらに、人工呼吸器の管理や経管栄養、輸液療法やストーマケア、褥瘡の予防と処置など、専門的な医療にも対応可能です。最期の瞬間まで責任を持って見守ることを大切にしており、入居者と穏やかな時間を過ごせるよう、多方面からサポートを提供しています。

ファミリー・ホスピス

ファミリー・ホスピスは、自宅の自由さと病院の安心感を融合させたホスピス型住宅です。全室個室を完備し、プライベートな空間を大切にしながら、24時間365日体制の医療ケアを提供しています。そのため、医療依存度が高い場合でも心穏やかに日々を過ごせます。

終末期医療においては、入居者の意向を最大限に尊重し、できる限り住み慣れた環境に近い空間での生活を支援しています。痛みなどの身体的な苦痛の緩和にとどまらず、精神的なケアにも注力し、入居者と家族の心に寄り添いながら、穏やかな最期を迎えられるようサポート可能です。

さらに、ファミリー・ホスピスでは多職種が連携し、チームアプローチによるケアが行われています。看護師・理学療法士・介護士など、各分野の専門性を活かし、入居者一人ひとりに合わせた最適なケアを可能にしています。

フレアス

フレアスは、訪問鍼灸マッサージを中心とした事業を展開しながら、医療特化型の療養施設(ホスピス)も運営しているのが特徴です。住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅の一部として、訪問看護および訪問介護事業所を併設する形で提供されています。

フレアスの医療特化型療養施設では、終末期のがん患者にも対応し、ターミナルケアの一環としてマッサージを受けられる環境を整えています。標準的な医療ケアに加え、訪問鍼灸マッサージの経験を活かした独自の緩和ケアを導入している点が特徴です。

鍼灸師によるリハビリや、拘縮が見られる方への施術など、一人ひとりの状態に合わせたケアを提供することで、生活の質を向上・維持します。

まとめ

終末医療は、残された時間をいかに「その人らしく」過ごすかを重視する医療・ケアを指します。医学的に回復の見込みがないとされた人に対し、身体的・精神的なケアを提供する行為が該当します。

終末医療は在宅での実施も可能ではありますが、介護・医療施設で受けることも可能です。施設での終末医療は費用の負担や面会時間の制限こそあるものの、孤独感や家族の負担を軽減できるメリットもあります。

本記事では施設ごとの終末医療についても触れているので、参考のうえどの施設を利用するか検討してください。

FAQ

終末医療とは?

医学的に回復が見込まれない人に対し、身体的・精神的・社会的なケアを提供することです。
詳しくは記事内「終末医療(ターミナルケア)とは」をご覧ください。

終末医療が行われる場所は?

介護施設や医療施設にて行われます。また、在宅で行うことも可能です。
詳しくは記事内「終末医療が行われる場所」をご覧ください。

施設で終末医療を受けるメリット・デメリットは?

家族の負担や孤独感を軽減できる点が、施設で終末医療を受けるメリットです。ただし、費用の負担や面会時間の制限に加え、入居者の環境が大きく変わってしまうデメリットがあります。
詳しくは記事内「施設で終末医療を受けるメリット・デメリット」をご覧ください。