ホスピスの基礎知識

ホスピスとは?緩和ケアとの違いやケアの受け方を簡単に解説

2025.04.24 2025.04.24

ホスピスとは、終末期の患者さまが心穏やかに過ごせるよう、身体的・精神的な負担を軽減するための医療やケアを提供する施設・サービスです。一般的な病院や介護施設とは異なり、延命を目的とするのではなく、患者さまの尊厳を尊重したケアが中心となります。

本記事では、ホスピスの入居条件や適切なタイミング、提供されるケアの詳細や費用の目安、さらには自宅で受けられるホスピスケアについても解説します。

大切な人が安心して最期の時間を迎えられるよう、ホスピスの選び方について一緒に考えてみましょう。

【この記事のポイント】

  • ホスピスとは、がん・難病で治療が難しくなった方が自分らしく穏やかに過ごせるよう支援する施設
  • ホスピスでは身体的なケア・精神面のケア・社会的なケアが行われる
  • ホスピス型住宅に入居するには「厚生労働大臣が定める疾病等」に該当していなければならない

そもそも「ホスピス」とは

ホスピスは、がんや難病などで治療が難しくなった終末期の方が、身体的・精神的な負担を和らげながら自分らしく穏やかに過ごせるよう支援する施設です。痛みの管理や不安の軽減に加え、経済的なサポートも含めた多職種の専門家が連携し、患者さまの生活の質(QOL)を維持・向上させることを目指します。

近年、従来の病院の緩和ケア病棟だけでなく、ホスピス型住宅や在宅ホスピスといった選択肢も広がっており、訪問診療や訪問看護を受けながら自宅で療養することも可能です。

ホスピスで行われるケアの内容

ホスピスで行われるケアには、以下3つがあります。

  • 身体的なケア
  • 精神面のケア
  • 社会的なケア

身体的なケア

身体的なケアの目的は、病気による苦痛を最小限に抑え、快適な生活を支えることです。痛みの緩和を中心に、呼吸困難を軽減する酸素吸入、食事や入浴、排泄のサポートなどが行われます。

さらに、マッサージによるリラクゼーションや、栄養補給のための点滴・胃ろうの管理も必要に応じて実施されます。

精神面のケア

病気に伴う不安や孤独感を和らげるための、精神的なケアも、ホスピスで受けられるケアの一種です。看護師や介護スタッフが患者さまとの対話を重ねることで安心感を与え、家族や友人との面会機会を調整し、精神的な支えとなる時間を確保します。

施設によっては季節のイベントやレクリエーションを通じて、患者さまの気持ちを和らげる工夫がなされています。また、カウンセラーやソーシャルワーカーが患者さまの話をじっくり聞き、精神的な負担を軽減する支援を受けられる場合もあるでしょう。

社会的なケア

ホスピスは社会的な側面からの支援も充実しており、医療費や入院費の負担を軽減するためのアドバイスや手続き支援が行われます。相続や遺言に関する相談、介護保険の変更申請、住所変更手続きのサポートなど、患者さまと家族が直面する課題に寄り添います。

生活保護や公的支援制度についての情報提供を通じ、経済的な不安を軽減できるような支援を受けられるのも特徴です。

緩和ケアとの違い

ホスピスケアと緩和ケアは、どちらも身体的・精神的な負担を和らげることを目的としていますが、適用される時期や治療の方針に違いがあります。

緩和ケアは、がんと診断された段階から受けることが推奨されており、必要に応じて延命治療と並行して行われることもあるでしょう。一方で、ホスピスケアは余命が限られた方を対象としており、延命治療を行わず、穏やかに過ごすことを優先します。

また、ホスピスケアは病棟だけでなく、高齢者向け住宅などでも提供されており、長期利用が可能な施設も存在します。

緩和ケア病棟と有料老人ホームとの違い

ホスピスと緩和ケア病棟・有料老人ホームの違いは、以下のとおりです。

ホスピス 緩和ケア病棟 有料老人ホーム
目的
  • 終末期の患者様の身体的・精神的な苦痛を緩和する
  • 自宅のような環境で自分らしく過ごせるように支援する
  • 専門的な終末期医療を提供する
  • 苦痛の緩和とQOL(生活の質)の向上を目指す
  • 介護が必要な方に対し、生活支援や身体介護を提供する
ケア内容
  • 身体的ケア
  • 精神的ケア
  • 社会的ケア
  • 痛みの管理
  • 症状緩和
  • 心理的なサポート
  • 家族への支援など
  • 痛みの管理
  • 症状緩和
  • 心理的なサポートなど
  • 食事・入浴・排泄などの身体介護
  • 掃除・洗濯などの生活援助
  • 医療ケアに対応した施設もあるが、緩和ケアを必要とする方の入居先は限定される
医療体制
  • 医師は定期的な訪問診療・緊急時は往診
  • 看護師は24時間常駐している場合が多い
  • 医師が常駐し、24時間体制で対応
  • 看護師の配置も手厚い(入院患者7〜10人に対し看護師1名)
  • 薬剤師や心理士、ソーシャルワーカーとの連携
  • 施設によって異なり、看護師が24時間常駐していない場合もある
  • 医療ケアが必要な場合には受け入れができない施設もある
入院・入居期間
  • 特に定めはない
  • 通常14日〜30日程度
  • 定めはない
居室
  • 個室が原則で
  • 家具や私物の持ち込みが可能
  • 自宅に近い環境で過ごせる
  • 個室もあるが、大部屋が多い
  • 私物の持ち込みに制限がある場合がある
  • 施設によって異なり、個室・相部屋などがある
面会や生活の自由度
  • 面会に制限は少ない
  • 外出や外泊もしやすい
  • 医師の許可のもとで喫煙や飲酒も可能
  • 面会時間や外出・外泊に制限がある場合が多い
  • 喫煙に関しては多くの病院が制限している
  • 生活の自由度は低い傾向にある
  • 施設によって異なる

ホスピスは、終末期を迎えた方が心身の負担を和らげながら、安心して自分らしく過ごせるようサポートする施設です。対して緩和ケア病棟は、専門的な医療の提供に重点を置いています。一方で、有料老人ホームは介護を必要とする高齢者の生活を支援する施設ですが、ホスピスや緩和ケア病棟ほど医療面でのサポートが充実していないのが一般的です。

ホスピスへの入居条件と利用の流れ

ここでは、ホスピスの入居条件やりようの流れについて解説します。在宅でのホスピスケアについても触れているので、ぜひ参考にしてください。

ホスピスの入居条件と対象者

ホスピス型住宅に入居するためには「厚生労働大臣が定める疾病等」に該当することが条件です。主にがんの終末期やALS、パーキンソン病などの難病の方、人工呼吸器を使用されている方なども受け入れられます。ただし、認知症が進行している場合は施設ごとに対応が異なりますので事前の確認が必要です。

ホスピスケアの対象者は特定の疾患に限定されず、がん末期やエイズなど、余命が限られた方が対象です。病状の進行により積極的な治療が困難になった際、苦痛の緩和を優先するタイミングで入居を検討します。ホスピスでは身体的な苦痛の軽減だけでなく、精神的な安心や家族のサポートも提供されます。

出典:厚生労働省「『厚生労働大臣が定める疾病等』について」

ホスピスを利用する流れ

ホスピスでケアを受けるまでの流れは、以下のとおりです。

1.主治医やケアマネジャーと相談 適切な施設かどうか判断し、介護保険の適用状況を確認する
2.見学・説明会への参加 ケア内容や費用について説明を受ける
3.申し込みと面談 入居希望を伝え、受け入れ可能か確認する
4.入居決定・手続き 具体的な入居日を調整し、医療・ケア内容を決定する

ホスピスに入居すると、一人ひとりの病状や希望に寄り添った医療・生活支援が受けられます。医師や看護師が中心となり、痛みの緩和や栄養管理などのケアを提供してくれます。

「在宅」で受けられるホスピスケアもある

ホスピスケアは病院や施設だけでなく、自宅でも受けられます。住み慣れた場所で安心して過ごしながら、必要なサポートを受けることが可能です。

在宅ホスピスでは、痛みを和らげるケアはもちろん、心のケアや社会的な支援も含まれます。医師や看護師、薬剤師、介護士が定期的に訪問し、患者さまと家族の生活を支えながら、できる限り快適に過ごせるようサポートします。

ただ、在宅での療養には、訪問介護サービスなどにかかる費用が別途発生することもあるため、事前に確認しておくことが大切です。

ホスピスの利用にかかる費用

ホスピスの利用にかかる費用は、ホスピス型住宅か病院の緩和ケア病棟かによって異なります。ホスピス型住宅のReHOPEを例に、費用相場をみてみましょう。

ホスピス型住宅(介護施設) 病院(緩和ケア病棟)

月額約19.7万円 + 一時入居金

<内訳>

  • 家賃・管理費:約10.6万円
  • 生活費:約5万円
  • 保険サービスの自己負担額:約4.1万円
  • 自費のサービス費用:施設・個人によって異なる
  • 一時入居金(初期費用):0〜1,000万円

月額約25〜30万円

<内訳>

  • 入院費(1割負担):約15.3万円
  • 食費:約4.5万円
  • 差額ベッド代:0〜8.1万円(病院によって異なる)
  • 自費のサービス費用:病院・個人によって異なる

【ホスピス事業者別】サービス比較

最後に、各ホスピス施設で受けられるケアの内容を比較してみましょう。

医心館

医心館は、医療依存度の高い方が安心して療養できる医療施設型ホスピスです。地域の医師と連携し、高度な看護ケアを提供する「地域医療のプラットフォーム」として機能します。

全室個室(一部施設を除く)でプライバシーを確保しながら、緩和ケアや人工呼吸器管理、栄養補給・輸液療法・ストーマ管理・褥瘡処置などの専門的なケアを受けられます。

公式サイト:医心館

ReHOPE

ReHOPEは、がん末期や神経難病の方を対象としたホスピス型住宅です。訪問看護・介護事業所を併設し、医療依存度の高い方にも対応可能です。

個室での生活ができ、自分らしい暮らしを尊重しながら、緩和ケア認定看護師による専門的なケアを受けられます。家族との連携を大切にし、安心して過ごせる環境を提供しているのがReHOPEの特徴です。

公式サイト:ReHOPE

ファミリー・ホスピス

ファミリー・ホスピスは、がんや神経難病の患者さま向けに緩和ケアを提供するホスピス住宅を運営している企業です。24時間365日のサポート体制が整い、専門スタッフによる訪問看護・介護を受けられます。

疼痛管理や人工呼吸器などの医療的ケアに対応し、意思伝達装置の紹介など生活の質向上も支援しています。居室は個室で、外出・外泊も可能です。

公式サイト:ファミリー・ホスピス

まとめ

ホスピスは、終末期の患者が安心して過ごせる環境を提供する選択肢の一つです。病院や介護施設とは異なり、痛みの軽減や精神的なケアを重視し、患者と家族の希望に寄り添うことを目的としています。また、在宅ホスピスも普及し、多様なニーズに応じたケアが可能となっています。

本記事を通じて、ホスピスやホスピスケアの基本を理解し、適切な選択ができるようお役立てください。人生の最終段階をより良くするために、最適なケアを選びましょう。

FAQ

ホスピスとは?

ホスピスは、がんや難病の終末期患者が身体的・精神的な負担を和らげ、自分らしく穏やかに過ごせるよう支援する施設です。痛みの管理や不安の軽減に加え、多職種の専門家が連携し、生活の質(QOL)向上を目指します。

詳しくは記事内「「そもそも「ホスピス」とは」をご覧ください。

ホスピスケアと緩和ケアの違いは?

ホスピスケアは余命が限られた患者が対象で、延命治療を行わず穏やかに過ごすことを優先します。一方、緩和ケアはがんと診断された段階から受けられ、延命治療と並行することもあります。

詳しくは記事内「緩和ケアとの違い」をご覧ください。

ホスピスケアは在宅でも受けられる?

ホスピスケアは病院・施設だけでなく、在宅で受けることも可能です。住み慣れた環境でサポートを受けられます。

在宅ホスピスでも病院や施設と同様に、痛みを和らげるケアや心のケア、社会的な支援を受けられます。

詳しくは記事内「「在宅」で受けられるホスピスケアもある」をご覧ください。