ホスピスの基礎知識

ターミナルケアとは?ホスピスケアとの違いや内容、費用などを徹底解説

2024.12.02 2025.01.15

患者自身や家族が残された時間をどう過ごすか考えるうえで、ターミナルケアは大切な選択となってきます。ターミナルケアは、終末期医療とも呼ばれる、自分らしい最期の時間を迎えることをサポートするケアのことです。

この記事では、ターミナルケアについてケアの内容や受ける方法などについて解説していきます。ターミナルケアの対象者やかかる費用などについても紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。

【この記事のポイント】

  • ターミナルケアはホスピスケアや緩和ケア、看取りケアとケアを行う期間や目的が異なっている
  • ターミナルケアには身体面のケアや精神面のケアだけではなく、金銭的なサポートも行う社会面のケアもある
  • ターミナルケアは介護施設や自宅、病院にて受けられ、自分に合った環境を選ぶことが重要

ターミナルケア(終末期医療)とは

ターミナルケアとは、治療による病気の回復が難しいと判断された終末期に行われるケアのことです。末期がんやエイズなど、さまざまな病気により終末期を迎えている方がターミナルケアの対象となります。

また、ターミナルケアの目的は、患者自身の尊厳を守り、残された時間でできるだけ質の高い生活を送れるように支援することです。厚生労働省における「人生性の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」では、患者や家族の意思決定が重要であると定めています。

さらに、ターミナルケアは病院だけでなく自宅や介護施設など、患者やその家族が希望するさまざまな場所で行われることも大きな特徴です。
出典:厚生労働省|人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン

なお、ターミナルケアの具体的な内容については。以下の記事を参考にしています。

【参考サイト】

 

ホスピスケアとの違い

ターミナルケアと似た言葉にホスピスケアがあります。ホスピスケアとは、余命を宣告された患者の身体的・精神的な苦痛を和らげる「ホスピス」という施設で行われるケアのことです。
ホスピスケアは、ターミナルケアのひとつであり、心と身体の苦痛を和らげ、さまざまな面から患者を支えることを大切にしています。また、ホスピスは、患者自身がその人らしい最期の時間を過ごせるよう、家族へのサポートも行うことも特徴です。

緩和ケアとの違い

緩和ケアとは、がんなどの病気による痛みやその他の症状を緩和し、生活の質(QOL)を向上させるための医療ケアです。緩和ケアには終末期に行うケアも含まれているため、ターミナルケアは緩和ケアのひとつだと言えます。
しかし、緩和ケアはターミナルケアとは違い、回復を目指して治療中の患者さんにも行われています。このように、ケアの対象となる人の状況が異なるのが、両者の大きな違いです。

看取りケアとの違い

看取りケアとは、終末期よりも先である最期の瞬間を迎える時期のケアを指します。ターミナルケアが患者さんの余命が告知された段階から始まるのに対し、看取りケアはその最終段階、死が間近に迫っている時期に行われるケアです。
このため、看取りケアはターミナルケアと比較して、より短期間の集中したサポートが行われることが違いといえます。

ターミナルケア(終末期医療)の内容とは

ターミナルケアは、人生の最後をより良い形で迎えるためのケアです。適切なターミナルケアを行うには、患者やその家族を総合的にサポートしていく必要があります。

ここでは、ターミナルケアの内容を、身体的・精神的・社会的な側面の3つに分けて紹介していきます。

身体面のケア

身体面のターミナルケアとは、患者の痛みや苦痛を軽減するために行うケアです。モルヒネをはじめとした鎮痛剤を使用した薬物療法や、リハビリテーション、マッサージなどを実施して身体的な痛みの管理を行い、患者ができる限り快適に過ごせるようにします。
また、食事による栄養管理や入浴を含めた衛生管理や皮膚のケア、トイレのお手伝い、排せつの介助なども身体面のケアに含まれています。

精神面のケア

精神面のケアは、誰もが持つ「死に対する不安や恐怖」や「遺された家族への心配」など、患者が持つ不安や恐怖を和らげ、心の安定を図ることを目的としたケアです。精神面のケアでは、主に心理カウンセリングやスピリチュアルケアが行われます。
また、孤独を感じないよう、友人や家族との時間や趣味の時間を作るなどのケアも、精神面のケアの一部です。さらに、患者だけではなく家族へのサポートも提供され、最期の時間をともに過ごす家族の負担を軽くする手助けも行われます。

社会面のケア

社会面のケアとは、ターミナルケアを続けるための金銭的なアドバイスや遺産問題へのサポートのことです。金銭的なアドバイスとしては、社会保障など保険制度の利用に関する情報提供も行われ、患者やその家族が経済的な不安を抱えることがないように支援されます。
また、遺言や相続などの法的な問題に関するアドバイスや、死後の準備に関する相談なども可能です。

ターミナルケア(終末期医療)を受ける方法

ターミナルケアは、患者や家族の希望する場所であれば、基本的にどこでも受けることができます。代表的な例としては、主に以下の3種類です。

  • 介護施設
  • 自宅(在宅)
  • 病院

それぞれの施設にはメリットとデメリットがあるため、医療の必要性や生活環境など、さまざまな面を考慮して選択することが大切になってきます。

介護施設でターミナルケアを受ける

ターミナルケアを行っている介護施設には、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)などがあります。介護施設には専門の介護スタッフが常駐しており、終末期の患者に対するケアが充実していることが特徴です。

また、医師による診断など施設内で24時間体制の医療サポートも受けられるため、急な症状の悪化などが不安な場合でも、安心して過ごせます。

介護施設のメリット・デメリット

介護施設で行うターミナルケアの主なメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリット デメリット
  • プロのスタッフによる対応が受けられる
  • 大勢の人がいるため、本人が孤独を感じにくい
  • 家族の負担が軽くなる
  • 費用が高額
  • 容体が悪化した時は、病院へ入院する必要がある
  • 施設により、提供される医療サービスの質に差がある
  • 家族との面会時間が限られている
  • 施設によっては、入居まで時間がかかる

なお、介護施設を利用するには介護保険の認定を受ける必要があるため、介護施設でのターミナルケアを検討している場合はあらかじめ覚えておきましょう。

自宅(在宅)でターミナルケアを受ける

自宅でのターミナルケアは、住み慣れた自宅で家族と過ごしながら、必要に応じて医師の訪問診療や看護師の訪問サポートを受ける方法です。最期の時間を住み慣れた場所で家族と過ごせるため、ターミナルケアの方法として多くの方が希望されています。

住み慣れた場所で過ごしながらターミナルケアを受けることで、心理的な安定感が得られやすいのが大きな特徴です。しかし、家族に介護の負担がかかることやすぐに医師・看護師の対応が受けられない側面もあるため、ご注意ください。

自宅(在宅)のメリット・デメリット

自宅(在宅)でターミナルケアを受けるメリット・デメリットは、それぞれ以下のとおりです。

メリット デメリット
  • 遺された時間を家族と過ごせる
  • 住み慣れた家でリラックスして過ごせる
  • 患者様の心配を家族がしなくてもいい
  • 訪問診療で酸素吸入や点滴が行える
  • 費用が抑えられる
  • 家族への負担が多くなる。退職や引っ越しをする必要もある
  • 急変した時にすぐに医師の診察が受けられない
  • 医療ケアや介護ケアなどサービスの頻度が増えると費用が高くなる

病院でのターミナルケア

病院でのターミナルケアとは、ホスピスや緩和ケア病棟で行われるケアのことです。医師や看護師、リハビリスタッフをはじめとした「緩和ケアチーム」により、充実したターミナルケアが受けられます。
基本的に医療スタッフが常駐しているため、緊急時でも素早い対応が受けられる点が特徴です。

病院のメリット・デメリット

病院でターミナルケアを受ける最大のメリットは、質の高い専門的な治療を受けられることです。一方、病院のという慣れない環境となるため、慣れるまでは精神的な安らぎが得にくいというデメリットがあります。
そのほかのメリット・デメリットについては、以下の表にまとめました。

メリット デメリット
  • 医療スタッフのケアを24時間体制で受けられる
  • 家族の負担が少ない
  • ソーシャルワーカーがいれば、医療費や手続きのサポートが受けられる
  • 費用が高い
  • 家族との面会時間が限られている
  • 医療スタッフがいるためリラックスしにくい

ターミナルケア(終末期医療)の対象となる人

ターミナルケアは病院や施設などで行われていますが、制度によって希望する施設を利用できない可能性もあります。各施設におけるターミナルケアの対象者は、以下表のとおりです。

対象者 対象施設
病院 ガンやエイズで余命宣告をされ、延命治療を終わられた方。
  • ホスピス
  • 緩和ケア病棟
介護施設 延命治療が終わられた方、かつ介護認定を持っている方
  • 特別養護老人ホーム
  • 有料老人ホーム
  • 介護老人保健施設

病院での看取りケアは、基本的にがんとエイズ患者のみとなっています。その他の病気ではターミナルケアを目的に入院することは出来ないため、施設での看取りを考えている場合は注意が必要です。

ターミナルケア(終末期医療)にかかる費用

ターミナルケアにかかる費用は、ケアを受ける場所や内容によって異なります。ただし、医療保険の高額療養費制度や、介護保険の介護保険負担限度額認定を利用することで、負担の軽減が可能です。

自宅ケアの場合、訪問看護や介護サービスに対する費用がかかりますが、多くのケースでは保険適用により負担が軽減されます。具体的な金額は、以下の表を参考にしてみてください。

ターミナルケアでかかる費用の目安
入院(緩和ケア病棟) 医療費(入院日数により変わる)
1割負担の場合
・1日:約5,000円
・3日:約15,000円
・7日:約34,000円
・14日:約57,600円※上限57,600円/月(一般的な保険適用時の月上限)
・食事代:約490円(1食)
・差額ベッド代:各病院による
自宅(在宅) 通院診療 ・診察費:約3,000円
・薬代:内容による
自宅(在宅) 訪問診療 ・診療費:約20,000円
・医学管理費:約5,000円(1回)
・薬代:内容による
・衛生材費:保険適応外
・医師・看護師の交通費:保険適応外
介護施設 ・介護費用:施設による
・看取り介護加算:死亡日より遡って計算
死亡日30日前~4日前:1,440円/日
死亡日前々日~前日:6,800円/日
死亡日:12,800円/日
※看取り介護加算算定時は、金額が変動する可能性があります

ターミナルケア(終末期医療)のタイミング・期間

そもそもターミナルケアを行うかどうかは、患者と家族の意思で選択できます。ターミナルケアは「延命をあきらめる」ことと同義になるため、開始は難しい判断となるでしょう。

一般的には、治療によって病気の進行を止めることができず、治癒の可能性が低いと主治医が判断したタイミングでターミナルケアの検討がなされます。この時点で医師は患者とその家族に相談し、治療からターミナルケアへと方針を転換するかどうかの相談を行います。

ターミナルケアの期間は患者の病状によって異なり、数週間から数ヶ月にわたり行われます。そのため、ケアを行うスタッフとコミュニケーションを取りながら、残された時間とその後の準備を進めていくことが大切です。

まとめ

ターミナルケア(終末期医療)は、患者に残された時間を快適に過ごせるようサポートするための大切なケアです。しかし、患者様の病気や状況でターミナルケアを受けられる場所や内容も変わってきます。

そのため、適切な情報を集めて自身に合ったサポートを受けることが、ターミナルケアの成功につながります。最期をどう迎えるかは非常に難しい選択であり、早めに検討するのが大切になるため、この記事を参考にしていただき、自分に合ったターミナルケアを目指してください。

FAQ

ターミナルケアとはなに?

ターミナルケアとは、余命が宣告され治療の効果が期待できない患者様に行われるケアのことです。患者だけでなく、寄り添う家族へのサポートも行われています。詳しくは記事内「ターミナルケア(終末期医療)とは」をご覧ください。

ターミナルケアでは、どのような看護・介護を行う?

ターミナルケアでは、病気の治療や入浴、食事の介助を含め、身体面・精神面・社会面の多岐にわたる看護・介護ケアが行われています。詳しくは記事内「ターミナルケア(終末期医療)の内容とは」をご覧ください。

ターミナルケアとホスピスケアの違いは?

ホスピスケアとは、ターミナルケアの一種として、ホスピスで提供される終末期ケアのことです。一方、ターミナルケアは自宅や病院などさまざまな場所で行われる広義の終末期ケアを指します。詳しくは記事内「ホスピスケアとの違い」をご覧ください。

ターミナルケアとエンドオブライフの違いは?

病気を中心に考えるターミナルケアに対し、エンドオブライフケアは最後までその人らしく生きるために行うケアです。エンドオブライフケアには、医療スタッフだけでなく、精神的・宗教的なサポートを行うスタッフも含まれることがあります。