緩和ケアとは?対象者やケアを受ける方法などについてわかりやすく解説
2025.03.03 2025.03.03
緩和ケアは、病気に伴う痛みや精神的苦痛などを取り除き、人生をよりよく過ごすために行われるケアです。緩和ケアはがんと診断された方が基本的な対象者になりますが、そのほかにも必要と判断された方であればケアを受けられます。
この記事では、緩和ケアの定義やホスピスとの違い、種類などについて詳しく解説。また、緩和ケアを受ける方法やかかる費用についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
【この記事のポイント】
- 緩和ケアとホスピスケア、ターミナルケアはケアを実施する場所や期間が異なっている
- 緩和ケアはがんと診断された方や終末期を迎えた方で、ケアを受けることを希望している場合に対象となる
- 入院して緩和ケアを受ける場合は24時間医療や看護などのサポートが受けられ、自宅で緩和ケアを受ける場合は慣れた環境で穏やかに過ごせるといった特徴がある
緩和ケアとは
緩和ケアとは、病気に伴って生じる心と体の痛みを和らげ、自分らしい生活を送るための
サポートを行うケアです。緩和ケアを受けることで、QOL(Quality Of Life)の向上につながり、病気で苦しい期間であってもより快適な生活を送れるようになります。
2016年12月の閣議決定では、重点的に取り組むべき課題として「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」を位置付けました。これにより、がん治療と並行して緩和ケアが行われるような動きが広がってきています。
がんと診断された段階からケアを行うことで、患者やその家族の精神的負担を考慮しながらの治療が可能です。また、がんの罹患数は年々増加しており、苦痛を和らげサポートする取り組みとして、緩和ケアの重要性が高まっています。
参考:厚生労働省|緩和ケア
緩和ケアの定義
緩和ケアの定義は、WHOより「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対するケア」と発表されています。
また、緩和ケアの大きな目的は、生活の質(QOL)を向上させ、前向きに生きる力を支えることです。そのほかにも、緩和ケアには以下のような目的があるとされています。
<緩和ケアの目的>
- 生きることを尊重し、誰にも例外なく訪れる「死に行く過程」にも敬意を払う。
- 死を早めることも、死を遅らせることも意図しない。
- 痛みのマネジメントと同時に、痛み以外の諸症状のマネジメントを行う。
- 精神面のケアやスピリチュアルな面のケアも行う。
- 死が訪れるとしたら、その時まで積極的に生きていけるよう患者を支援する。
- 患者が病気に苦しんでいる間も、患者と死別した後も家族の苦難への対処を支援する。
緩和ケアとホスピスの違い
緩和ケアとホスピスに大きな違いはなく、実施しているケアや看護、治療内容はどちらも同じです。
主な違いとしては、緩和ケアは病院の外来や入院時など基本的に病棟にて行われるところ、ホスピスは病棟だけではなく、ホスピス住宅や老人ホームなどでも行われる点があげられます。
なお、ホスピスケアとは余命が近い患者さんが人生最期を穏やかに過ごすために行われるケアのことです。医療や看護はもちろん、生活のサポートとして食事や排泄、入浴の介助などさまざまなサポートを受けられる特徴があります。
【参考サイト】
緩和ケアとターミナルケアの違い
ターミナルケアとは、自分らしく最期を迎えるために行われる終末期ケアを指します。緩和ケアとターミナルケアの大きな違いは、ケアが行われる期間です。それぞれのケアがはじめられるタイミングについては、以下を参考にしてください。
- ターミナルケア:終末期から行われるケア
- 緩和ケア:がんなどの重い疾患と診断されてから行われるケア
なお、ターミナルケアで行われるケアの内容は、主に以下3種類です。
身体的ケア | 痛みや呼吸苦などの症状緩和、栄養補給のサポート |
精神的ケア | 死への恐怖や残される家族の心配などの精神的苦痛を
和らげるサポート |
社会的なケア | 治療費や遺産相続、遺品整理など、経済的不安を
ソーシャルワーカーや身内と協力して援助する |
ターミナルケアは、ケアが必要だと判断されれば、がんのほか疾患にかかわらず受けられるのが特徴です。
緩和ケアの対象となる方
緩和ケアの対象となる方は、生命を落としてしまう危険性のある疾患を患っている場合など、以下のとおりです。
- がんと診断された方
- 終末期を迎えている方
- その他の疾患を患っている方
また、患者さんを支える家族も緩和ケアの対象になります。なお、日本では主にがんと診断された方を中心にケアしていますが、海外ではさまざまな疾患が主な対象となる特徴もあります。
がんと診断された方
緩和ケアの主な対象となるのは、がんと診断された方です。緩和ケアは、がんと診断された段階で、がん治療と並行して行うことを推奨されています。
人によってがんの症状はさまざまですが、がんによる身体的苦痛や精神的苦痛を緩和ケアで和らげることが可能です。
終末期を迎えている方
終末期を迎えている方も、緩和ケアを受ける対象となります。緩和ケアでは、診断時から終末期まで患者さんや家族に寄り添いサポートします。診断時の段階で緩和ケアを受けておらず、終末期の段階で緩和ケアを受けたいと考える方も、対象です。
終末期では、患者が自分らしい最期を迎えられるように、さまざまな行動をサポートしてもらえます。ただし、周りの患者に迷惑となるような行動は取らないようにしてください。
その他の疾患を患っている方
以下のような生命を脅かす疾患を持っている方も、緩和ケアの対象です。
<緩和ケアの対象となる疾患>
- 急性外傷
- 心血管疾患
- 主要臓器不全
- 薬剤耐性結核
- 末期慢性疾患
- 後天性免疫不全症候群(AIDS)
- 極度の修正未熟または老年期の極度の減弱
いずれの疾患も、緩和ケアによって身体的苦痛や精神的苦痛を和らげることが期待できます。
緩和ケアの種類
緩和ケアには、以下2つの種類があります。
- 基本的緩和ケア
- 専門的緩和ケア
これらの2つの違いや内容について詳しく解説するので、参考にしてみてください。
【参考サイト】
基本的緩和ケア
基本的緩和ケアとは、緩和ケアを専門とした担当者ではなく、がんなどの疾患の治療を行う医師や看護師が行うケアのことです。がんと診断された時点からケアが行われ、身体的苦痛を和らげる治療が受けられます。
また、不安などの精神的苦痛の緩和を目的とした、カウンセリングを受けられることも特徴です。
専門的緩和ケア
専門的緩和ケアとは、基本的緩和ケアでは苦痛の緩和ができないとき、特別なトレーニングを受けた緩和ケア専門のチームが対応するケアのことです。
また、専門的緩和ケアは、主に以下3種類の場所で受けられます。
<専門的緩和ケアが受けられるところ>
- 外来における緩和ケア(緩和ケア外来)
- 一般病棟もしくは緩和ケア病棟
- 自宅療養おける緩和ケア
専門的緩和ケアのチームは、医師や看護師をはじめとして、薬剤師、社会福祉士、公認心理師、理学療法士、栄養士など、さまざまな職種で構成されているのが特徴です。それぞれの分野における専門家が協力し合うことで、質の高いサポートが提供できます。
緩和ケアを受ける方法
緩和ケアを受ける方法は、主に以下4種類です。
- 病院に通院して緩和ケアを受ける
- 自宅で緩和ケアを受ける
- 一般病棟に入院して緩和ケアを受ける
- 緩和ケア病棟に入院して緩和ケアを受ける
4種類の方法について、詳しく解説します。
病院に通院して緩和ケアを受ける
病院への通院では、がん治療の外来と緩和ケア外来の2パターンにて緩和ケアが受けられます。通院は比較的症状が軽く、負担が少ない方が利用することが多いです。
外来による緩和ケアの取り組みは病院によって異なり、事前にどんなケアを行っているのか確認しましょう。また、緩和ケア外来を行っていない病院や、日によって緩和ケアを受け付けていない病院もあるため、受診前にきちんと確認してください。
自宅で緩和ケア受ける
自宅でも緩和ケアを受けられるケースがあり、これを在宅ホスピスと呼ぶことがあります。
ホスピスを伴う緩和ケアの場合は、主に余命が近い方が対象です。
自宅での緩和ケアは、看護師や介護士が患者宅に直接訪れ、サポートを行っていきます。日本人の多くは最期の時間を自宅で過ごすことを望んでおり、自宅で緩和ケアを受けることは患者にとってメリットが大きいといえるでしょう。
しかし、看護師や介護士がサポートを行うのはあくまでも自宅に訪れている時間のみであるため、家族にとっては介護負担が増えるデメリットがあります。負担が大きい場合は専門家に相談し、病院でのレスパイト入院(一時入院)や介護保険のサービス活用を検討しましょう。
一般病棟に入院して緩和ケアを受ける
一般病棟に入院すると、治療を担当する医師、看護師からの緩和ケアが受けられます。入院による緩和ケアは、がんなどの疾患の治療と並行して行われるのが一般的です。
がん治療を受けながらでも、基本的緩和ケアを同時に受けられるのが大きなメリットといえます。
緩和ケア病棟に入院して緩和ケアを受ける
緩和ケア病棟とは、緩和ケアに特化している病棟のことです。緩和ケア病棟に入院することで、必要になったときにいつでもケアを受けられるメリットがあります。緩和ケア病棟には、終末期を迎えている方が入院するケースが多いです。
また、緩和ケア病棟の多くが個室であり、プライバシーが配慮されている特徴もあります。家族が宿泊できる家族室やファミリーキッチンなどが設置されている病院もあり、緩和ケアに特化した環境が整えられていることも魅力です。
緩和ケアを受けられる期間
緩和ケアは、がんや重い疾患と診断されてから最期のときを迎えるまでの期間で受けられます。1990年、WHOががん治療と緩和ケアが密接な関係になるという新しい見方を発表したことで、治療を行う時期や緩和ケアのやり方が変化してきました。
また、時間の経過とともに治療の負担が大きくなることから、最期を迎える頃は治療の比重を減らし、緩和ケアの比重が多くなっています。
緩和ケアにかかる費用
緩和ケアを受けるには、当然ながら費用がかかります。ここでは、緩和ケア病棟に入院する際にかかる目安費用について紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
医療費(入院日数により変動)
※1割負担の場合 |
1日:約5,000円
3日:約15,000円 7日:約34,000円 14日:約5,7600円 ※上限57,600円/月(一般的な保険適用時の月上限) |
食事代 | 490円/食 |
差額ベッド代
(個室部屋など) |
各病院によって異なる |
自費のサービス代 (おやつやおむつなど) |
各病院によって異なる |
参考:東京西南私鉄連合健康保険組合|令和6年6月から入院時の食費が変わります
まとめ
この記事では、緩和ケアの概要やケアを受ける方法などについて解説しました。緩和ケアの対象となる方は、生命を脅かす危険性が高い疾患を患っている方やその家族です。
緩和ケアは、がんや重い疾患と診断されてから最期のときを迎えるまで受けられます。費用は保険の種類や個人の状況により異なりますが、高額療養費制度などで負担軽減が可能です。利用にあたっては、各施設の条件や保険の適用範囲を事前に確認し、自身のニーズに合ったケアを選択しましょう。
また、終末期の方はホスピス住宅で緩和ケアを受けることも選択可能です。
FAQ
緩和ケアで受けられる看護はどのようなもの?
緩和ケアで受けられる看護の種類は主に以下のとおりです。
- 痛みや呼吸苦などのつらい症状を取り除くケア
- 食事を楽しんだり、安眠できるようにするなど日常生活を取り戻すケア
- 患者さんの心に寄り添い、元気になるケア
- 不安などを抱えるご家族へのケア
詳しくは記事内「基本的緩和ケア」をご覧ください。
緩和ケアでがんの痛みがとれるの?
がん患者の90%以上は、緩和ケアを受けることで身体的または精神的な痛み軽減を実現しています。緩和ケアは痛みを取り除くことを第一に考えたケアであるため、気軽に医師や看護師に相談して、自身に合ったケアを受けるようにしましょう。詳しくは記事内「緩和ケアとは」をご覧ください。